忘れてはならないフィレンツェの名物料理には風味豊かなステーキがある
近代看護教育の母、ナイチンゲール。
彼女はイギリスの富豪の名家に1820年に生まれ、閑雅な田舎に育った。
成人するにおよび、彼女は作家になるか、結婚して主婦になるか、看護婦の道を選ぶか迷ったが、両親の反対を押し切って看護婦の道を歩んだ。
当時の病院は、制度・施設も不備で、金持ちしか治療を受けられなかった。また、看護婦の地位も低かったので、両親の反対もあたりまえなのである。ドイツなどで正規の看護教育をうけ、ロンドンの淑女病院の看護婦長となったのが、33歳のときである。
彼女の名を高めたのが、クリミア戦争でのめざましい活躍だった。
34人の看護婦を引き連れてトルコにおもむき、野戦病院の徹底的改革に超人的な努力をささげ、たちまちにして死亡率を大きく引き下げたのであった。
人々は彼女を「ザ・レディー・ウィズ・ザ・ライト(光明夫人)」と呼び、その功を称えた。
万国赤十字社では、彼女にちなみ、「ナイチンゲール賞」を設けて、毎年世界各国の優秀な看護師を表彰しているが、その受賞は看護士最高の栄誉とされている。
彼女は名をフローレンスという。
両親がフィレンツェに滞在しているときに生まれたので、その英語名を名前につけたのだという。
フィレンツェには忘れてはならない名物料理がある。「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」、フィレンツェ風ステーキである。イタリアで最もやわらかいキアーナ(トスカーナ州)産の牛肉を用い、骨付きのまま分厚く切ったステーキで、味つけはオリーブ油、塩、こしょうのみ。
炭火で「アル・サングエ(血もしたたる)」という形容をつかうくらいのレアに焼く。肉の自然の風味が味わえる逸品である。