人類史上記念すべき土地にある魅惑のステーキがある
1856年7月19日、ドイツ西部のネアンデルタールという村のフェルトホーファー洞窟から、頭蓋骨を含む14個の骨が発見された。それらの骨は明らかにヒトのものであったが、頭蓋骨は現代人ものとはかなり異なっていた。
眉上隆起が目立ち、歯が大きく、鼻孔部は突き出ており、アゴは引っ込んでいた。
この遺骨はネアンデルタール人と呼ばれるようになったが、それが人類の原始的な形態を示すものか、単に骨に異常をもった一個体なのかといった疑問が沸き上がった。
しかし、その後ヨーロッパ各地で同種の人骨が発見され、半世紀の後、キング博士によって世界ではじめて発見された化石人類と認められた。ここにネアンデルタールは、人類史上記念すべき土地となったのである。
ネアンデルタールの西方約12キロに、ノルトライン・ウェストファーレン州の州部デュッセルドルフがある。かつてナポレオンが「ラインの小パリ」と称えた美しい町である。戦後、諸外国の企業が拠点を置く国際ビジネス都市に変貌した。
この町を代表する料理に、「フィレステーク・ナッハ・デュッセルドルファー・アルト」(デュッセルドルフ風ステーキ)がある。
この地方で生産されるゼンフ(マスタード)はレーヴェンゼンフ(ライオンのマスタード)と呼ばれ、こくあがりディジョンものに勝るとも劣らない味と定評がある。
そのゼンフとグリュイエルチーズ、ホイップクリームを混ぜ合わせたものをステーキに盛り、オーブンで焼き色をつけたものが「デュッセルドルフ風」なのである。
ステーキの香りから、マスタードの町デュッセルドルフが浮かび上がる。