プロの野球選手の一言が「カツカレー」を誕生させた
かつて巨人軍に千葉茂という名選手がいた。
名門松山商業から川上哲治と同期で入団し、戦前・戦後を通じて巨人軍の黄金時代を支えてきた名二塁手、名リードオフマンである。
そのファイトあふれるプレーから猛牛のニックネームで鳴らした野球通好みの選手だった。また、長嶋茂雄の前に背番号3をつけていた選手としても有名である。
オールドファンに言わせると、史上最高のライトヒッターとのこと。嫌いな球はファウルで粘り、投手が根負けした球を右翼へ落とすという打法だった。
引退後、近鉄の監督に迎えられたが、それまでは「パールス」といった球団名を、千葉のニックネームにちなんで「バッファロー」(この後バッファローズに変更)とする厚遇ぶりを近鉄側は示した。
世界中で個人のニックネームを球団名に残しているのは千葉だけだ。その千葉が意外なところにも名を残している。
いまでは広く知られているカツカレーなる人気料理であるが、その生みの親が千葉だというのだ。カツカレーの元祖をうたう銀座の「グリルスイス」によるとこうだ。巨人軍の現役選手だった千葉はグリルスイスの常連で、カレーもカツも好んで食べていた昭和23年のある日、別々だと面倒だからカツを切って、その上にカレーをかけてくれと注文したことから、カツカレーが誕生したのだという。
野菜をベースにしたカレーと薄めに切った肩ロースを揚げたカツの絶妙な関係がここにある。
すりおろした野菜で煮込んだカレーソースは、やわらかな甘味さえ感じられる。カレーと一緒に煮込む肉は自然にとろけ、カツのうまさを損なうこともない。